「銀砂の民」


今回は五番目の(そして最後の)組織となる「銀砂の民(ぎんしゃのたみ)」を紹介いたします。

 

街から川上へと、西に徒歩で二日ほど行ったあたりに、「銀砂の民」の村があります。

彼らはもともと狩猟採集生活を送っていた部族で、今でも狩猟や漁業、林業などを行なっています。また古い伝統・慣習が残っています。

しかし街の発展による影響からは逃れられず、徐々に近代化が進んでいるのも事実です。

 

しばしば街の人間は勘違いしていますが、彼らは完全な自給自足が行えるわけではありません。『銀砂の民』は長いあいだ街との交易を行なってきた歴史があるのです。

収穫した狩りの獲物や作物、木材、それらの加工品は街に運ばれ、そこで現金化されます。こうして得た現金は、村では作れない品物を購入したり、村での商業活動で利用されます。

 

『銀砂の民』という呼び名の由来は、村の近くの水場で取れる白砂です。

この白砂はガラスの素材に適し、一時期は村でガラス細工が作られたこともありました。しかし今ではだいぶ廃れてしまい、わずかな職人が細々と続けているばかりです。

 

村の指導者は「族長」と呼ばれます。族長は伝統的に村でもっとも強い者がこの地位に選ばれます。そのため二十代なかばから四十代までの男性であることが多くなっています(現在の族長は三十代後半です)が、女性が族長の座についたこともあります。

また村の古老たち(おおよそ五十代以降)は知恵者として族長を補佐し、呪術師のような役割を果たすこともあります。怪我や高齢によって力を失い、次の族長に地位を明け渡した者も、年齢に関わらず古老として扱われます。

 

このように、『銀砂の民』は人工的な意図を持って作られた組織ではない、自然発生的な集団ですが、いくつかの理由から他の組織の注目を集めるようになり、ついに五番目の組織として迎えられることになりました。

 

銀砂の民へ特に積極的な干渉を続けているのは、ユートピア協会と天煌騎士団(預言者の会)です。

 

・騎士団との関わり

騎士団の崇敬の対象である預言者ミユキは、戦慄すべき蛮族の王『死を欺くもの』が率いる騎馬部族との戦いに出向いたのですが、この戦いにおいて銀砂の民は大きく活躍したことが知られています。

彼らは斥候やガイドを務めたほか、兵站の一部を担い、戦いでは優れた弓の腕前を示しました。

 

・協会との関わり

協会は街のみならず、周辺の『近代化』を進めていました。

その過程で周辺の調査が行われ、やがて『銀砂の民』の風習である『成人の儀式』の特異性に気づいたのです。

銀砂の民は成人のための通過儀礼で異界に趣き、そこで異界の品を持ち帰ってきていたのです。

この風習は協会による『近代化』により廃れつつありましたが、『銀砂の民』が伝統的に異界の力をこの世界に持ち込んでいたという事実は、協会にとって軽視できないことでした。

 

協会は『銀砂の民』を監視するために工作を行い、彼らを五番目の組織としての地位を与えました。

現在、彼らの村には協会の研究施設が建築中であり、また小さいながら騎士団の駐屯する教会ができています。

『銀砂の民』の村には街から金、物、人が流入し、好景気が訪れています。他方、村の人間の一部は街に派遣され、そこで見聞を広めています。

 

彼らと街の関係は一見すると平和なものに思えますが、街の住人はこの不確定要素を利用して自分たちの手駒にしようとしているのです。

 

……もちろん、『銀砂の民』も街の連中を利用しようとしているのですよ。

(保住実)

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